History歴史
大谷石と『石の蔵』
梁まで6メートル近くある蔵の壁は、手掘りだった頃の豊かな表情を残した大谷石がどっしりと積み重ねられています。その古い蔵の佇まいを活かした店内は悠久のときを過ごしてきた自然素材に溢れています。
幻想的に直立する巨大な和紙の光柱、野趣溢れる木の家具、瓢箪の照明などがダイナミックに配され、モダンでありながら、どこか懐かしい心地よさを演出しています。

文字通り石積みの蔵である“石の蔵”には、 大谷石とともに歩んできた秘められた歴史があります。
大谷石は宇都宮市西部に位置する大谷町付近で産出される緑色凝灰岩のことです。すでに古墳時代の石室などにその利用が見られ、近世に入ると宇都宮城の改修に大量の大谷石が使われるなど、大谷石は古来よりこの地の人々の生活とともにありました。
大谷石の名声を決定的にしたのは、大正元年(1912年)に完成した巨匠、フランク・ロイド・ライトの設計による旧帝国ホテルでした。この名建築は関東大震災にも大きな被害を受けず、優れた耐火性が実証されました。
こうしたことから大谷石は蔵の建材としても使われることとなり、宇都宮の町並みには、大小さまざまな大谷石の蔵がとけ込んでいます。
そうした蔵のひとつとして、この東塙田の蔵はありました。約70年ほど前に建てられたこの蔵は、砂糖や小麦粉などの食品原材料の業務用倉庫として長い月日にわたり、その役割を担ってきました。しかし、その後、倉庫が郊外に新設され、役目を終えた蔵はひっそりと休息の時を刻んでいました。
その眠っていた空間が、現代のクリエイターたちの手によって、創作和食の店“石の蔵”としてよみがえりました。
そして2006年に、個室、カフェ&ショップを増築し、更に2015年にカフェを2階に増床し、現在の形となりました。